「ジャーヘッド」鑑賞

厳しい訓練に耐え、湾岸戦争に挑んだ狙撃手のスオフォード。
しかし、彼に待っていたのはフセインでもイラク兵でもなく、ただ戦闘を待つだけの退屈な時間だった。
人を殺す術を叩き込まれたにも拘らず、銃を撃つことすら無い日々を押し付けられた彼等はやがて心に異常をきたし始める…。


アメリカン・ビューティ」でいきなりアカデミーを取ったものの、続いて発表した「ロード・トゥ・パーディション」以来全く姿を現さなかったサム・メンデス監督が、また唐突に帰って来ました。
しかも未知のジャンルである「戦争映画」を引っさげて。
最初は「どうなるんだろう?」とも考えましたが、心理描写を得意とする彼だけに、兵士の精神に罅が入っていく様を見事に描いたんじゃないかと思います。
つまり戦争映画なのにドンパチをやるシーンがほとんど無かったって事ではありますが、その退屈さが逆に的を得ていました。
見終わった後の感覚は、端っこ程度とはいえやはり戦場を経験してきたような狼狽感でしたし。


そういえば、映画の終盤の方で軍曹が主人公に海兵隊である事を、毎日神に感謝している。こんな光景が他で見れるか?」と言うシーンがありましたが、あれには隠れた狂気を感じました。
それは傷つく事を恐れて気が狂うよりも、戦場にあって平静を保ち続けられる方が遥かにイカれてるんじゃないかと思ったからです。
もしかしたらこれって「ブラックホーク・ダウン」のフートが発した「戦場には仲間がいる。だから戦うのさ」っていう台詞並みに名言なのかもしれませんね。
意味合いは全く逆ですけど。
あとラストの終戦パーティで、一度も撃つ事の無かった銃を夜空に乱射するシーンも、この映画を端的に現してるようで良かったです。
ワンシーンで映画の全てを語りきるのを観たのも「フルメタル・ジャケット」のミッキーマウス・マーチ以来じゃないかなと思いますし。
とにかく、派手さはありませんでしたが、観て心に残すものが大きい良い映画だったので、見ようと思っている方は躊躇わずに劇場へ行く事をお勧めしたいです。
見た後の気持ちと向き合って、戦争について考えるのも一興ですよ。