「ターンエー」思い出あれこれ

折角ですんで、ちょっと昔話をさせて頂こうかと思います。
ターンエーと言われてまず真っ先に思いつくのは、あの奇抜なデザインでしょう。
「おヒゲ」と呼ばれる所以ともなったあの口元のアンテナには世間でも非難轟轟でしたが、じつはオレも当時はこの非難する側に回っていた人間の一人でした。
「これがガンダムか!?」「こんなのガンダムへの冒涜だろ!」と初めてデザイン画を見た時は周囲に当り散らしていたんですが、ある時にこれを「ガンダムガンダムだ」と言っている自分に気付いたんです。
「オレ、こんなモビルスーツガンダムって言ってるじゃん」って感じで。
そしてその時、これほど異常な姿をしていながらも『ガンダム』としか認識できないこのデザインは凄いんじゃないかと思い始め、考え方が変わり始めました。
それからこのデザインをかみ締めてみると、コアファイターの位置やシステムがコアブロックよりも遥かに利便性の高い形で使われている事や、脚部背面総てにあしらわれたスラスターが機動性の上でも理にかなっていることに気付き、その説得力の高さに感服。
更にそこに盛り込まれたおヒゲの遊び心に、オレのハートは完全に奪われたのです。
機能美と説得力と遊び心まで兼ね備えたこのデザインは、モビルスーツとして完璧なのではないか、と。
よくよく考えてみれば、ガンダムとは最初兵器として描かれたものの、回を増すごとにそのデザインは一種の象徴としてしか意味を成さない存在に成り下がっていました。
が、このターンエーは違います。
極めて道具として緻密に出来ている上に『ガンダム』である事を両立している…。
正にそれは「総てのガンダムを肯定する」という物語のコンセプトそのものに一致すると感じたのです。


デザインだけですっかり陶酔させられてしまい、放送を今か今かと待つようになったオレでしたが、そこに悲劇が訪れます。
何と、宮城ではターンエーが放送されない事が決定してしまったのです。
これには本当に落胆させられました。
「大人になったらテレビ局に勤めて、宮城でも全てのアニメを見れるような世の中にしてやる」とまで考えちゃいましたからね…。
で、仕方ないので関連書籍を買ったりマンガを見て話を追ったりしてたんですが、ある時に偶然にもアニメを見るチャンスが訪れる事になります。
それが何かと言うと、修学旅行です。
旅行先の京都では放送が行われていたので、初めてリアルタイムでアニメを見ることが出来たわけなんですが…。
この時に放送された「マニューピチ攻略」は一切ガンダムが出ない回だったんですよね。
これ見て更に「大人になったらテレビ局に…」って思いが強まったのを覚えてます。


あれからもう8年も月日が流れて、今や地デジの普及でアニメにも事欠かなくなり、ガンダムと言ったらSEEDというような時代に移行してしまいましたが、それでもオレの一番好きなモビルスーツは「ターンエー」から変わっていません。
そして多分、今後もこれ以上の魅力を持ったモビルスーツが現れる事は無いと思います。
昨今ではまたガンダムがデザイン的象徴として用いられるようになってしまいましたが、だからこそもう一度原点に立ち返って、見つめ直していただきたいと切に願います。
そして出来たらまた、オレの常識を覆してくれるようなモビルスーツでも創っていただきたいです。