「トーキング・ヘッド」鑑賞

Talking Head [VHS]

Talking Head [VHS]

どんな作風も模倣できる流しの裏演出家「私」が、公開1ヶ月前にして台本すら上がらない劇場用アニメ映画「トーキング・ヘッド」の監督代理を依頼された。
しかし、その数日後からアニメを製作している「スタジオ八百馬力」のスタッフが何者かによって次々と殺害され始めてしまう…。

押井守の実写映画第3弾なんですが、聞きしに勝るとんでもない作品でしたね…。
とにかくケレン味たっぷりとか言うよりも、そのハッタリだけで作ってしまった映画と言う方がしっくり来る内容です。
脚本家、色指定、編集などなど、それぞれの担当者が延々と自分の論理を長台詞でまくし立てたり、死んだ人間がゾンビになって生き返ったりするシナリオもさることながら、舞台となる「スタジオ八百馬力」も映画館の客席に組んだセットだけで撮影されているなど、とことん虚構である事を演出しています。
まぁ、その不条理感が押井守の実写作品らしさであり、味なんでしょうけど、それを知らない人には全くついていけない世界観なのかもしれません。
それと、「紅い眼鏡」同様、出演者はやっぱり声優が多いです。
有名どころだと立木文彦*1とか、田中真弓*2が出てましたか。
本当にハリウッドとは真逆にある、独特な作風を持つ映画だと思います。


そういや、劇中で「私」がこんな事を語っていました。


『語られた映画とは、常に映画の記憶の事でしかない。
指し示す事はおろか、引用すら出来ず、語ろうとする時には提示する事も不可能で、しかも他者との共時的体験すらない個的な経験…。
それが映画を観るという行為の実相だ』


そんな事を言われたら、今感想を書いたオレの立場はどうなるんでしょうか…。

*1:新世紀エヴァンゲリオンの「碇ゲンドウ」役で超有名な声優。押井守作品にもちょこちょこ起用されている。

*2:ドラゴンボールの「クリリン」や、ワンピースの「モンキー・D・ルフィ」役でお馴染みの声優。ジブリ作品にも出ている超ベテラン。