「かぐや姫の物語」鑑賞(ネタバレあり)

昨日観てきた映画がこれです。
ジブリ映画は何度か映画館で観てきましたが、高畑勲監督の作品をスクリーンで観たのは初めてでした。
この映画はタイトルからお判りの通り「竹取物語」をアニメーション映画化したものです。
竹取物語は絵本から、まんが日本昔話から、教科書まで、日本で生きていく限り一度は何処かで目にしている物語であろうと思いますが、逆に言えばありきたり過ぎてそんなに深く取り上げられたりもせず、絵本はダイジェスト形式で、アニメになっても15分で纏められ、教科書でも冒頭のみピックアップという形で済まされる事が多い不遇な作品な気がいたします。
そんなお話を150分掛けてじっくり描いたのが「かぐや姫の物語」でございます。
正直2時間映画だと高をくくって飯も食わずに劇場に行ったら物凄い長さで、してやられた気分でしたよ。


で、観た感想ですが、率直に言うとこれって「竹取物語」だよなという一言に尽きます。
上映時間は150分もあるし、ジブリ独自の解釈や展開が待っているだろうと思いきや、竹から生まれる所も原作通りだし、月に帰るオチも同じでオリジナルの展開とかは殆どありませんでした。
むしろ今まで端折られて来た部分の補完をしっかり描いた所を褒めるべき映画なのかもしれませんね、これは。
そういう観点から竹取物語を改めて見ると、かぐや姫ってのはある種「魔性の女」なのかもなぁと思わされました。
美貌と才能で貴族に成り上がり、男の心を手玉にとって家庭を崩壊させたり、人によっては死に至らしめたり、それで懲りたかと思えば妻子ある幼馴染をたぶらかしたり、揚句に育ての親を捨てて月に帰ってしまう始末ですからね。
この話の原作者は不明らしいですけど、きっと物凄い美人に入れ込んでふられた挙句にすべてを失って、せめて復讐にこの教訓を物語にして後世に残してやろうとでも思って執念で創作したんじゃなかろうかと思ってしまいます。
でもまぁ、「殆ど」オリジナルと言った通り、独自の解釈が無かったわけではありません。
かぐや姫が月に居た時代の描写も僅かながらあったり、超人的な力で空を飛び回ったりするシーンは胸に迫る物がありました。
でも結局姫が地球に来た具体的な理由も分からず、回想に出ていた人物の詳細も語られず仕舞いでむしろモヤモヤが残った感も否めません。
かぐや姫が去った後の地球もどうなったのか分かりませんしね。
補完するのも良いのかもしれませんけど、やっぱエンターテイメントとして映画にするなら「その後」を描くとか、月からの使者を振り切って地球に残った場合の話とかも見たかった気がします。


で、ここからは個人的な話なんですが、やはり東方好きとしてはかぐや姫と言われれば「蓬莱山輝夜」を意識せずにはいられません。
なのでそういう視点からも見てたりしましたけど、蓬莱の玉の枝、仏の御石の鉢、火鼠の皮衣、龍の頸の玉、燕の子安貝という輝夜のスペルカードの元になった五つの難題のエピソードは出てきたものの、藤原妹紅の父親とされる藤原不比等は出てきたりせず、そっち方面で期待してみても若干の肩透かしを食らう結果となりました。*1
ただ二次創作でよく見かける輝夜ニート設定に近いエピソードは見受けられましたね。
貴族は汗をかかないから眉を必要としないし、動いたりもしないから長い服を着るし、笑ったりもしないから歯を鉄漿にするそうなので、貴族ってのは言い換えればニートであり、その教えを叩き込まれた輝夜もそういう描写が似合うのかなーと。
…まぁ、きっとたまたまなんでしょうけどね。
そんなわけでまぁ、映像とかに目を見張るものはあったりするものの、ストーリーに大きな期待をすると痛い目を見るかもしれません。
あくまで丁寧に描かれた「竹取物語」だと思って観に行くと納得できるかもしれません。
何かきっと今後こういう映画が小学校でレクリエーションに使われたり、教材として観させられたりするのかもなーって思いました。
とりあえず気になった方は映画館へどうぞ。

*1:もしくは自分の知識が浅いだけで、あの5人の中の誰かが妹紅のお父さんだったかもしれませんけど。