「許されざる者」鑑賞

ミリオンダラー・ベイビーが素晴らしかったので、イーストウッドが過去にアカデミーを取った「許されざる者」をレンタルして見てみました。
農夫によって顔を切り刻まれてしまった娼婦が、割に合わない軽い裁きで解決しようとする保安官に代わり、賞金稼ぎに犯人の始末を頼むという話ですが…。
うーん、難しいですね。
見方によっては盛り上がりに欠けるダラダラした西部劇なんですが、この作品のテーマをちょっと考えてしまうと途端に物語の深さが変わります。
そのテーマとは「正義」です。
農夫に手を下してもいない友人を殺され、酒場にいる人間全てを巻き込んで保安官に復讐するイーストウッド
娼婦を差別し、銃を持つものを全て悪人として処罰する保安官。
ろくに銃も撃てないのに農夫を殺し、怖気づく賞金稼ぎのキッド。
そしてこの事件をけしかけた娼婦達。
これら全ての人々には何かしら正当な理由はあるものの、どれも一概に善とは言えません。
一体「正義」とは何か…。
そう考えると答えを出すのが難しくなります。
よく解りませんけど、もしかしたらこの話はアメリカの正義を象徴させているのかもしれませんね。
暴力を振るわれる事も、振るう事も、結局痛みしか残さない。
そうなると「許されざる者」とは、人間の業そのものなんでしょう。
こんな映画を10年以上前に撮っているのに、戦争をし続けるアメリカって何なんでしょうね…。


映画評論家の淀川長治さんは「もっと映画を見なさい」という言葉を残してこの世を去ったそうです。
この「許されざる者」という作品を見て、彼のこの言葉の本当の意味が少しは解ったような気がします。
映画ファンとしても、一人の人間としても、この作品を完全に理解することがミリオンダラー・ベイビーに次いで与えられた、イーストウッドからの宿題のように思えました。
うーん、深ぇなぁ…。