「風立ちぬ」鑑賞(ネタバレあり)

公開前日にも拘らず前売り券がまだ売られていると聞いて、昨日の仕事帰りにローソンへ寄ってチケットを買い、その足のままエアリの映画館へ行って座席権に引き換え、今日映画を観てきました。
前日に一手間掛けるだけで500円も料金が安くなるなんてスゲェお得ですな。
今後もローソンチケットを有効活用していきたいと思います。


さて映画ですが、「ゲド戦記」以来久々に映画館でジブリ映画を観てしまいましたよ。
何か今回は今までの宮崎駿作品と違ってファンタジー路線じゃ無さそうだなと思って食指が湧いたんですが、その勘は当たってました。
平たく言うとこの物語は主人公の堀越二郎零戦を作るまでの話でして、人一人の人生を描いた伝記のようなお話となっています。
なのでトトロみたいな空想の生き物など全く出てきたりはしないんですが、それでもファンタジーな要素は沢山ありましたね。
夢に始まり、夢を経て、夢を成し遂げて、夢に終わる。
天才が抱く空想の世界と現実が交じり合う感覚はファンタジーさながらです。
個人的にはこの匙加減一つでもうちょい面白くもなったような気がしますが、やりすぎると現実と妄想の区別が付かない天才の狂気を描いた話になりかねないので、考えようによってはよくファンタジックに仕上げてくれたもんだと感心してしまいます。
きっとこういう幻想的な雰囲気を感じられた一助には、時代や世の中や人間の汚いものを極力描写しなかった事にあるんだろうなとも思いますね。
悪い人は基本的に出てこないし、主人公も近眼な所以外は文武両道で欠点も無く、仕事で失敗した所はあっても苦悩したりする場面も無く、舞台が戦時中に移っても戦火はおろか戦争で人が死ぬシーンすらありません。
極めてポジティブな面ばかりが描写されているのが物語の心地良さを生んでいたんだと思います。
ただやはりこの映画の悪い面も沢山あったりします。
先程言った通り、可愛いキャラクターとかは一切出てこないのでジブリ映画と言えども子供向けではありません。
内容も「楽しい」よりかは「シリアス」なので小さいお子さんは面白さを見出せないでしょうし、しかも上映時間が2時間20分もあるのでとにかく長いです。
実際にシアターでは音を上げているお子さんも居ましたし、公式の方である程度ターゲットが大人であることは事前に言っておくべきだったと思います。
それと話のオチが随分と急でしたね。
ゼロ戦が完成して、奥さんも亡くなったらはい終わりって感じで、二郎のその後とかは一切語られずにスタッフロールってオチでしたんで。
一応史実に基づいているお話でもあるんで、もうちょい何か語ってくれても良かったんじゃないかと思いますね。
でも物語のその後を考えるのは観客の仕事だとクリント・イーストウッドも語っていたので、あえてその後を匂わせる物を一切描かずに夢の中で終わりを迎えたのは潔いとも思いますが…。
でもあの「え、これで終わり? 盛り上がるのこれからじゃないの?」と思ったあの感じを未だにスッキリと覆せていないのはやはり問題なんじゃないかなと。
それとちゃんとした声優さんを使わないのもやはり作品の質に影響を及ぼしていたと思います。
庵野監督には悪いですけど、主人公よりモブの方の演技が上手いとユーモラスな台詞も全く面白くありませんな。
味はまぁ確かにあるんですが、やはり説得力ってのは一朝一夕では生まれないものでしょうな。
作画とかが凄く手が込んでいて説得力に溢れているだけに、声の演技がついて来ないのはやはり勿体無いと感じてしまいました。
でもプロにやらせないのがジブリお家芸でもあるので、今更プロの声優さんにガッチリ布陣を固められたらそれはそれで違和感を生みそうですな…。
難しいものです。


まぁ、長々と書いてしまいましたが、悪い点はあるとは言え払ったお金以上の価値のある物は見せてもらったと思っています。
二郎の新婚生活では「ジブリなのにこんなシーンあるの!?」とか思ったりもしましたし、やっぱ作画は凄いですしね。
ただお子さん向けの作品ではないという事だけは改めて断言しておきます。
ある程度お年を召されて、社会人生活もそこそこ経た方ならばこの映画の良さは分かるんじゃないかなと思います。
そんなわけで気になった大人の方はどうぞ。