昨日観てきた映画がこれです。
一応、近日公開作品の一覧でこの「映画大好きポンポさん」ってタイトルを見かけたことはあったんですが、あの当時はこの作品を自分が観に行く事になるとは正直全く思っておりませんでした。
その後、上映開始から少し経った頃にKindleで原作の漫画が2巻まで半額のセールをやっていたので、試しに買って読んだんです。
映画の都ニャリウッドで敏腕プロデューサーを務めているのが小さな女の子というのはある種のファンタジーに感じますので、中身もコミカルな感じなんだろうな思いきや映画製作の裏側や映画そのものへの夢や愛をしっかり描いている骨太な漫画で御座いました。
これを映像化するのって想像がつくようでつかないなぁと思っていたら、相楽からポンポさんを観るお誘いがありまして、ワッツと3人で昨日行ってきたという訳です。
全員のスケジュールの都合で1日の上映数も少なくなってきたこのタイミングでの鑑賞となりましたが、独特の楽しさがあるレイトショーで見る事も出来て、非常に楽しい思いをさせて頂きました。
で、映画の感想ですが、一言でいうと上級者向けですね。
ここ最近観てきたアニメ映画は鬼滅、エヴァ、ハサウェイとド派手なアクションや趣向を凝らした映像で魅せる作品ばかりでしたが、ポンポさんが題材としているのは映画の舞台裏です。
なのでバトルなど一切無く、代わりに撮影現場の苦労、役者の苦悩、作品が出来上がっていく喜び、そして出来上がった映画が栄光を勝ち取るまでの様子が描かれます。
実写映画の製作過程をアニメ映画で見るというのは何ともシュールに感じますが、ナタリーが歌うシーンや、ジーンが編集でゾーンに入る表現なんかはよっぽどのアイディアでも無ければ実写での表現が難しいだろうと思うのでアニメーションである意味はちゃんとあったと思います。
そして題材が題材だけにメタ的な表現が多かったのも面白かったですね。
作中で言及されていた通りこの映画も90分で終わっていたのはお見事でしたが、実際に見た感覚はそれよりもずっと長かったです。
自分は面白い作品はあっという間に終わるけど、すごい作品は実際の時間より長く感じるという自論を持っているんですが、ポンポさんもこれに当てはまる作品って事ですね。
張りに張られた伏線とその回収を堪能するだけでも面白いと思うんですが、一方でやはり「生みの苦しみ」にスポットが当てられた作品だけに「楽しい」だけで終わらないのは受け手への苦痛にもなっていたかなと思います。
原作だと「この映画ニャカデミー取っちゃうぜ」とポンポさんが言ってから割とすんなり受賞まで漕ぎつけたように思うんですが、映画版だとそこからが長いんですよ。
ジーン君が編集に悩んだり、資金繰りで行き詰ったりというオリジナルの展開は見ごたえはある物の、面白いかと問われたらちょっと返答に悩むレベルです。
漫画だとジーン君はあんなに楽しそうに編集してたのになぁと思ったり、映画製作で軽やかに世界中を飛び回っているポンポさんが映画版だとスポンサーの降板問題に直面したりと、見たくなかった現実も見せられたような感じがするんですよ。
自分も創作を齧った事はあるので、作品作りは楽しい事ばかりじゃないってのは分かります。
オリジナルキャラの活躍もきちんと調理して組み込んでくれたと思いますが、個人的には心からスタンディングオベーション出来るとは言えないかなと。
でもその辺は好みの問題でもありますし、ここまで描いたからこそ受け手に映画への「新たな視点」という物を齎してくれたんじゃないかと思います。
これから実写映画やテレビ番組を観る時はジーン君やポンポさんみたいな苦労があって出来ているんだろうなと考えるんでしょうね。
なので自分は「上級者向けの映画」と評させて頂きました。
映画の裏側を描く映画なんてなかなかお目に掛れないと思いますので、気になった方はどうぞ。
あと原作は最低でも1巻は読んでから観る事をオススメします。
可能なら2巻まで読むと最後に出てきた台本でニヤリと出来るかもしれませんよ。