「劇場版 艦これ」鑑賞(盛大にネタバレあり)

今朝の朝一の回で観てきました。
映画館に到着するとまぁ、とにかく人が多くて驚きましたよ。
グッズ販売やってたんで物販に行列、艦これのポップコーンコンボも売ってたのでフードカウンターも行列。
そうでなくても上映するシアターの前にも大行列で、ロビーは3つの行列が入り乱れるカオスな状態となっておりました。
幸い座席は指定されているのでチケットさえ買えば観れないという事はありませんが、それでも行列のお陰で上映開始時間までに入れないんじゃないかと思える程でした。
で、肝心の内容ですが、世間に酷評と炎上の嵐を巻き起こしたあのテレビアニメ版の続きという事で、正直事前のネットの声も期待は薄い印象でした。
かく言う自分も3話の如月轟沈の件とかは心に引っ掛かる物がありましたし、あれ以来6話のカレー作戦以外基本的にアニメ版は繰り返して見るような真似もしていません。
なので程よく悪い事を忘れ、割と真っさらな気持ちで劇場へと足を運んだ次第です。
ある意味では内容が酷くても悪い方へ流されないよう、心の予防線を張った状態で観に行ったとも言えるんですが…。
まぁ、ともかく率直に感想を言います。


賛否両論はあるかと思いますが、想像していた以上に面白かったです。


開始からいきなりTV版では登場しなかった鳥海、加古、古鷹、衣笠、青葉、天龍の三川艦隊による夜戦で始まり、喋る、動く、戦うのオンパレードで掴みはバッチリでした。
その後も龍驤が出たり、背景には春雨、綾波、敷波だとか、妙高型の改二姿だとかの未登場艦が多数出てきて目で追うだけでも楽しかったんですけど、登場して驚いたのは事前に情報が無かった時津風天津風の存在でしたね。
出てくるだけならまだしも、セリフもあってちょいちょい出てきたりもしましたんで。
時津風なんてあんなきわどい格好してるんだから動く姿なんて見れないだろうと思っていただけに驚きも一入でした。*1
…が、ストーリー的に一番驚いたのはやっぱ如月の再登場でしょうね。
序盤の夜戦で深海棲艦の残骸から艦娘が出てきたので、「ああ、ドロップってやっぱこんな感じか」と思ったらそれが如月だったので吃驚仰天ですよ。
そして彼女が戻ってきた事でテレビ版では語られなかった艦娘と深海棲艦との関係も明らかにされます。
艦娘は轟沈して海の底に沈む事によって深海棲艦化しますが、それを倒す事で稀に艦娘として生まれ変わる事があり、そのお陰で如月は戻って来る事が出来た、と。
薄々感づいていた事ではあるんですけど、このように公式作品で曖昧だった部分が明かされるのは久しぶりの事だったので、アニメの1話を見た時の新鮮な感覚を思い起こさせられるようでした。
更にここから物語は吹雪を軸とした「アイアンボトムサウンドにある深海棲艦の中枢への殴りこみ」と、睦月を軸にした「如月との因縁の決着」の2本柱で支えられて展開していきます。
おそらく賛否両論の「賛」と「否」があるのはそれぞれの話のケリのつけ方に拠る所が大きいかなと思いますね。
まず睦月サイドですが、こっちは概ね良好です。
不完全な状態で復活してしまったお陰で再び深海棲艦化を始めてしまった如月を救う術は、如月をまた水底に沈め、再び生まれ変わるチャンスを待つのみです。
それまで戦い続けなければならない選択を強いられた睦月の宿命を終わらせるには、映画で採られたあの方法が一番綺麗だったのではないかと思います。
テレビ版ではかなり不遇な扱いを受けてきた睦月と如月が救われたと同時に、あの3話の負の呪縛から提督諸氏も解き放たれたと感じる事が出来たので、物語の上でも現実でも枷から外された感覚から二重のカタルシスを得られた気がしました。
一方で吹雪の話にはかなりの唐突感があって戸惑いを禁じえませんでしたね。
艤装にまでダメージを及ぼす海の赤色化の原因がアイアンボトムサウンドにあるので突撃したものの、水底に堕ちた吹雪の覚醒と対話で解決ってのには割と無理があったかなと。
吹雪が艦娘になった際に鉄底海峡に置き去りにした実艦の無念が深海吹雪と化したのは分かるんですが、それが吹雪の始まりではあっても「深海棲艦の始まり」とは到底思えなかったので納得はし難かったかったです。
更に言うと自分が「希望」だと思うに至る過程にも材料が足りなかったと思うので、もうちょい伏線を張って欲しかったですね。
頑張れば全ての艦娘が過去の軛から開放されつつ、誰も沈まずに深海棲艦を殲滅するよりも早く平和的に戦いを終わらせる方法を確立出来たかもしれませんので残念だったかなと。
なので睦月の話は良くても吹雪の展開には納得が行かなかったと言うちぐはぐ感から評価を貶めそうかなと思った次第です。
ただテレビ版から追い続けている自分みたいな提督にとっては微妙だったというより救われた気持ちが強いと思いますので、結果として評価は悪くない所に落ち着くのではないかと思われます。
後はこれらを踏まえてアニメ第2期等へ展開を繋げて貰えれば更に溜飲は下がるでしょうけど、その後の評価は完全に作り手の技量に掛かっているので二の舞だけは踏んで欲しくないと一ファンとして願っております。
そんなわけで一見さんはお断りでも、ある程度古参の提督なら救われる作品だと思うので自分の思いに区切りを付けたい人は観ても良いんじゃないかと思います。


ちなみに上映後にライブビューイングの中継もあったんですけど、声優さんの想いもしっかり伝わってここでもより満足させられた感じがありました。
特に印象に残ったのは夕立役のタニベユミさんの言葉でしたね。
「作品に出なかった艦娘も違う場所で違うドラマを繰り広げていると思う」という旨の話を時間一杯まで熱く語ってくれた所にはちょっとこみ上げる物がありました。
これは天龍や龍田が出ても木曾が出なかった事を気に病むのは野暮だって事ですよね。
劇中で夜戦のカッコ良さと幽霊の声に怯える可愛さを両方確立してしまって、もう一人の眼帯の立場を無くしてしまったと思う木曾嫁提督への励みになってくれたと思います。
「次こそは…! アニメ2期こそは…!!」という強い想いを持って締めくくれて良かったです。
BDとか出たら舞台挨拶も収録されたら良いなぁ…。

*1:もちろん見せない構図ではありましたが。